フノノ旅する日記ブログ

The World is Wonderful!◯◯への一歩は必ず踏み出せる!

キブツ生活 ナツメヤシってどんな果物?

シャロームハベリーム!

 

キブツサマールに来てからほぼずっとナツメヤシ農場で

働いてきました。これからいよいよ長い収穫の時期に突入します。

 

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樹齢10~15年のナツメヤシ(種類:デケル・ヌール) 実の色は緑→緋色→ブラウンへと変化していく

 

猛烈な太陽の下でこれまで収穫(ガディットゥ)のための準備をし、そしてこれから

夏の終わりまで毎日収穫しまくりますo(`ω´ )o

シーズン中は昼間だけでなく、夜間のシフト表も貼り出され

老若男女キブツメンバーを総動員し収穫作業を行います。

 

ガレージではサマール独自の大型機械が次々に整備され、出番を待っています👇

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 キブツサマールが誇る巨大ナツメヤシキャッチャー(上も同様)

このマシンには以前住んでいた日本人女性の名が付いている

その名も「MEGUMI号」

 

私はこれまでナツメヤシをいうものをイスラエルに来るまで見たこともなければ食したこともありませんでした。

現在は主に北アフリカ諸国や中東諸国の広範囲で栽培されていますが、日本人にとってはまだまだ馴染みがない果物だと思います。

日本のオーガニックショップには置いてあるんでしょうか?あったらどこの国から輸入しているかが気になります。

 

我々にとって馴染みのないナツメヤシの歴史は長く古代エジプトメソポタミアの時代、つまり今から7000~8000年前に既にひとによって栽培されていたと考えられています。またナツメヤシムスリム経典コーランにも度々登場し、旧約聖書創世記ではエデンの園の中央に植えられた「生命の木 Tree of Life」はナツメヤシがモデルになっているとも言われています。もともと極端に雨の少ない砂漠地帯で育ち、その味は蜂蜜のように濃厚で栄養価も高いため太古から砂漠の民やベドウィンなどの遊牧民にとっては生きるのに欠かせない食料となってきました。砂漠に住む太古の人間が宗教話に登場させ神と結びつけ重要な樹として位置づけるのも納得できる気がします。

 

ちなみにイスラエルで砂漠地帯があるのは南部と死海周辺のエリアのみで、

湿気の多い中央部や北部ではナツメヤシが育つのには適さないそうです。

砂漠という極地に一体どれほど強い果樹なのでしょう!Σ(゚д゚lll)

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 作業場所へはトラクターかTOYOTA HIACE(ボロボロ)で移動

 

Kibbutz Samarのナツメヤシを紹介!

 さて、我々がの農場で育てているナツメヤシは以下の4種類です。

上から農場全体を占める割合が多いものから順にしています。

現在、一万本弱のナツメヤシが植えられているとのことです。

*メジュール(60%)

*デケル・ヌール(25%)

*バリ(10%)

*ザヒディ(5%)

 

それではそれぞれの種類の特徴やこれまでの作業内容を紹介します。

[メジュール]

現在イスラエルで栽培されているナツメヤシの中で一番一般的な種類と言われています。実のサイズは他と比較すると大きく一つの総に大量に実っています。

熟してくるとキレイなブラウン色をしており、食感はネチネチした干し柿のようです。

味は非常に濃厚で、糖度と栄養価が高そうなのが一口でわかります。

メジュールの消費は国内だけに留まらず海外へも輸出されており、

また近年はそのナツメヤシ市場がインドで拡大しているとのことです。

 

メジュールの起源をキブツのひとに聞いたら、一説によると現在世界各国で栽培されているメジュールの全ての木は元々一本の原木から広まったとのことです。取れた実の種を採取し増殖させたのではなく、オリジナルの木の根元から生える部分を新たな苗として根こそぎ大地から取り出し、それを植えまたその木から苗を取り出し増殖させていったとのことです。どこからどう広あったかのかと聞くと、かつてモロッコかナイジェリアの王国にその原木はあったが、盗まれたため世界各国へ拡大していったとか.....

最初は伝説の域から出ない話かと思っていましたが、他の人にも聞くと同様なことを言うので驚きました。しかし、いつの年代の話か誰も定かではないため結局どこまでほんとなのかハッキリしません!( ;´Д`)

 

さてメジュールの収穫のための作業は剪定(リグゾーム)と実がついた房全体に袋を

取り付けるというものでした。

剪定作業は徒歩と大型機械を使う二通りをやりました。

 

 この徒歩での剪定作業はほんとに大変でした。

まず灼熱の中を飲み水を入れたポリタンクと大きな剪定バサミを担ぎながら

木から木へと移動していかなければなりません。

しかも、ナツメヤシの枝の元には先端に毒を持った鋭く長い棘があり

それに注意を払いながら枝をかき分けハサミを入れる必要があります。

また昔切られた棘付きの枝が周辺には捨てられており、

踏むと棘は容易に靴の底を貫通し、足の裏まで届いてきます。

 

雲ひとつさえない空の下、熱さ×棘×毒の脅威との戦いでした。

 

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広大な農場をひたすら歩いて作業  

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木陰で休憩 水はガブガブ飲まないと脱水症状で死んでしまいます

ポリタンクは10ℓ分

 

 

実ついた房全体に袋を取り付ける作業は、剪定作業よりも大変でした。

袋をつける理由は防虫防鳥と収穫の際は袋ごと揺らして中に落として

そのまま回収するためです。

余分な枝を伐採するだけのとは違い、枝や雑草をかき分け棘を避け、時には重い総を持ち上げ二人がかりで袋を取り付けました。

単純な作業ではありましたが、とにかく灼熱のなか徒歩でという点と剪定よりも何倍も体力を使うという点で非常にしんどかったです。

 

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 袋かけ完了後のメジュール 枝の元に毒棘が見える

 

[デケル・ヌール]

次に紹介するのはデケル・ヌール。

 

ヌールとは元々アラビア語で火の色、つまり赤を意味しています。

文字通り緑から収穫時のブラウン色になる途中に真っ赤な色に

実全体が変化します。

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 緋色に変わっている途中で落ちたもの ナツメヤシは追熟しないらしいので枝から離れた時点で色の変化も止まる 

 

デケル・ヌールもメジュールと同様、輸出もしているようです。

 

熟したものを食べていないので、味の比較ができませんが、

メジュールと異なる点は、収穫までの手入れです。

メジュールは房全体に袋をかけましたが、デケル・ヌールには

実に着くミクロの蜘蛛とその巣を払い落とす作業をしました。

蜘蛛が取り付いたものを見せてもらいましたが、蜘蛛と判別するのさえ分からないほど

のミクロサイズ!

よーーーく目を凝らすと0.1~0.2ミリ程の白いものが実の間をうごめいてました👇

 

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蜘蛛はミクロ過ぎて写りません 実の隙間に見える白いものが糸です 

 

なぜ蜘蛛を払いとす必要があるからと言うと、蜘蛛はナツメヤシの皮と果肉の間を嚙り

品質を下げてしまうかららしいです。

 

では、こんな微細な蜘蛛と巣をどうやって落とすのか?というと、

水を高圧放射するという方法で作業をしました。

以前は農薬を使っていたということですが、収穫後倉庫でパッキングの際に

人体への影響が良くないということで水へ切り替えてたそうです。

 

ということで、ここのナツメヤシは水のみで虫を撃退!100%オーガニック!

です( ´ ▽ ` )ノ

 

そして高圧放射するマシーンは一体どんなものなのか?

ここ注目です👇

 

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サマールが誇る高所放水マシン 名称<ハギ・シャグ>

後部のタンクは合計で総水量5,500リットル

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 運転席とは逆の方面を向いたシートに座りJoy stickコントローラーで先端に装着された放水機 通称<キャノン>を操る

上下に伸びる白いホースは手作り連絡用ホース

 

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 サマールが独自開発したコントローラー 

 

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 高所にあるナツメヤシに放水中 トラクターエンジンの圧を上げると

水力も増すようになっている

 

さながら映画マッド◯ックスに登場するかのような仕様に最初は驚きました( ´Д`)y━・~~ 

自分はハンガリーのルームメートと一ヶ月弱毎日Joy stickで放水し続けていました。

おかげで途中から片手だけでもコントローラーを操作するまで腕が上がりました!(笑)

 

このハギ・シャグのようにサマールでは自分たちでガンガン改良を加え、

オリジナリティー溢れるマシンを作ることが他のキブツと一線を画している、

と言われています。

 

ちなみに<キャノン>一個のお値段は2500シェケル(約70,000円前後)だそうです👇

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 作業をしない時は柱を倒します

 

[バリ]

バリはここの農場では比較的新しいほうで、10~15年の木ばかりです。

よってまだ低木なものが多く、他の種類とも区別がしやすいです。

一番古いナツメヤシの木は約40年前に植えられたもので、高さは15m近くあります。

老木になるにつれ重い先端部分を支える力が弱くなり、かなり傾き倒れそうなものは危険なため伐採されていきます👇

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ナツメヤシの老木樹齢約40年 キブツができてすぐ植えられたもの

 

バリについて聞くとここイスラエルではサマールともう一つのキブツの二箇所でしか

栽培されていないそうです。

国内で需要はあるが、供給が追いつかないためブランド化しているのだとか...

ここサマールでは先週全てのバリの房に袋を取り付ける作業が終了しました。

メジュールと同様、実がブラウン色になり熟してから収穫するためあと2ヶ月ほど

待機期間がありそうです。

また育つのに適さない北部でも栽培がされているらしいですが、

湿気が多いため実の色が黄色の時に収穫される、と聞きました。

追熟はしないと聞いていましたが、うーん

まだまだ色々奥が深いナツメヤシです。

 

さて、バリのこれまでの作業ですがデケル・ヌールに施した高所放水とは

異なりマニュアルタイプでの放水作業を行いました。

これも実を囓る虫を落とす目的があります。

 

方法はいたってシンプル。巨大なタンクを積載したトラクターでヤシの間を徐行しながら総目がけて消防士よろしく放水しまくっていくだけです👇

低木なため跳ね返りも半端なく全身びしょびしょになります。

しかし、猛烈な暑さのなか濡れながらやるこの作業が一番快適だった気がします

ε-(´∀`; )

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 おじさんとそれぞれ左右のヤシへ放水!

 

[ザヒディ]

 最後に紹介するザヒディは写真がありませんが、見た目は他と同じです。

 

4種類の中で一番安価で売買されるらしく、そのためなのかここでもわずかしか

栽培していません。ハンガリーのルームメイトに聞くと母国でも売られているそうで、輸出国はイラン、サウジアラビア、モロッコ、エジプトと他の中東諸国ではメジャーみたいです。

サマールの農場では全体の約5%しか栽培していないザヒディですが、

ハマスが実効支配するガザ地区への食料としても供給しているとのことです。

安価なナツメヤシだからガザ地区へはザヒディのみ供給しているのか、他のナツメヤシも送っている中にザヒディも混ぜられているのかは分かりませんが作業を通してこの国の抱えている問題の一つへ間接的に触れた気がします。

 

以上、これまで働きながら自分で見聞きしてきたことを

まとめてみましたがナツメヤシという果実と農場での作業の雰囲気が少しでも

伝わったでしょうか。

 

次回は、いよいよ始まる収穫の様子をお伝えしたいと思います!

 

明日は安息日のシャバット( ^ω^ )

それではみなさんシャバットシャローム