シナイ半島・モーゼ山に行ってきたよ!(Day 1st.)
先週の4月中旬にイスラエルでは、ユダヤ教でも重要な歴史的出来事、モーセの出エジプトに因むお祭りペサハ(Pesach):過越祭に伴う大型連休が明け、再び国中は平常通りに戻りました。
子供たちは2週間半という長期の休みをもらい、プラス大人たちもそれに合わせ休暇を取るため全国で帰省ラッシュや観光などでどこへ行っても渋滞や大混雑という
まるで日本のGWやお盆休みのような状況でした。
因みに兵役中の若者も休みが取れるらしく、実家でリラックスしたり友人と会ったり、あるいは砂漠にトレッキングへ出かけたりなどして束の間の休息期間を過ごします。
さて、本題ですが、キブツから6日間の休暇をもらい色々と危険な事案や噂が絶えないシナイ半島に行きました。
それももう一月中旬のことですが( ̄Д ̄)ノ
ということで備忘録も兼ねて見たもの聞いたもの感じたものを記したいと思います。
大雑把に分けて...
越境(イスラエル・エイラットからエジプト・タバ)
⬇︎
セントカトリーナ市(トレッキング開始)
⬇︎
⬇︎
帰国
の順番に進んでいきたいと思います。
【越境】
実は自分、越境はこれまで空路か船舶だけで徒歩で国境を渡るという経験を
したことがありませんでした。
ということで、朝からテンションを上げつつちゃっちゃと国境すぐ隣まで
バスで向かいます。
しかし1月という完全な観光の閑散期とシナイの情勢が良くないことが重なり
全く自分たち以外に観光客がいない!税関や警備の人しかいない!
Duty Freeのお店のおばさんも手続きをするデスクのお姉さんも
スマホを見るばかりで完全に静まり返っていました...
まぁこんなものかとテンションも下がります(; ̄ェ ̄)
とにかく出国税の102シェケルを払い、幾つかの検問を抜けます。
そしていつ国境を超えたかもわからないうちにエジプト側のターミナルが
見えてきます。
荷物検査器を通り、パスポートにスタンプを押してもらい
ようやく入国した感が湧いてきました。
越境に20分程かけ無事エジプトへ入国完了!
最後のゲートを出たところで、行く前からキブツの友達のつてで
事前に連絡を取っていたTaxiの運ちゃんハメッドへ合流します。
他にもドライバーはいて暇そうに観光客が来るのを待っていましたが、
「ハメッドはいる〜〜??」
と叫ぶと俺だ俺だ!といわんばかりに出てきたので、
他のドライバーたちはちょっとしけた感じが漂っていましたd( ̄  ̄)
【セントカトリーナ市へ】
早速トヨタHIACE VANに乗り込みモーセ山と修道院があるセントカトリーナ市へ
向かいます。
国境を離れるために行き先や乗員を書いた書類を提出するハメッド
役人は何かボードゲームに興じていた...
とりあえずサウジアラビアが対岸に見える海岸線をガンガンと車を飛ばし、
南下しますが、途中何回も軍の検問を通過しその度にパスポートを見せます。
エジプトでは軍施設や兵士を撮ろうとすると問題になり、最悪捕まったりするという事前情報を得ていたので写真はありません。
笑顔とアッサラームアライクムッ!でカラシニコフをぶら下げる兵士と言葉を交わします。
山羊とベドウィン
途中景色が良いところでわざわざ車を止めてくれるハメッド
3時間のドライブで軍の検問を合計10回弱通過し、ようやくセントカトリーナ市に
着きましたが、ここはモーゼ山も含め広大な国立公園です。
...という事実を知らなかったので、入園料を支払うようにハメッドから言われた時は
「あぁ入園料がいるんか?!そんでいくら??」という感じで少し驚いてしまいました。
一人25エジプトポンド(約125円)を払いました。
シナイ半島の南部は砂漠ではなく赤い山々が延々と続く山岳地帯。
首都カイロからははるか遠く、間近にそびえ立つ山々に囲まれていると、もはやエジプトにいるという感じは全くなく、世界の果て、辺境の地に来たという気持ちになります。そんな厳しい環境の中で谷間や山間に村を築き、大昔から暮らしてきたベドウィンたちはエジプト人と言うより彼らはあくまでもベドウィン。「砂漠・山岳の民」であり、独特の文化や考え、生活の質を何千年も保ちながら細々と生活を送っているように思えます。
【Fox Campに到着】
ハメッド友人らの溜まり場所になっているFox Campという、キャンプ場兼Guest Houseのような場所に着くなり、早速多くのベドウィンたちにチャイで出迎えられます。
砂漠街道を突っ走りFox Campに到着!
チャイで世間話をするベドウィンら
「どこから来た?」
「何日シナイにはいるんだ?」
「どこに行きたいんだ?」
「モーゼ山からの朝日は格別だぞ!だけどイン シャアッラー!」
という感じできますが、こちらも負けじと地図を広げながら予定を伝えようとしたところに出てきたのが、ハメッドの仕事上のボス、ジュメア登場。
彼が現れ地図を見るやいなや...
「6日間の日程ならここから、こう山に入って行って、谷間にアマリーヤという女性が住んでいるから宿泊可能で云々カンヌン.....そんで最終日にモーセ山で日の出見て11:00に下山して、国境まで送るからな!よしっ出発!」
とまぁあっという間にサクサクっと決めてくれました。
結局彼のプランは歩く行程に無理がなく、景色のポイントもしっかり押さえ、半ば強引だったものの後々頼んで良かったなと思えるものでした。
これ以降、我々は彼のことを『監督』と呼ぶことにしました。
【トレッキング開始】
トレッキングの行程が決まったところで、自分たちのガイド、イブラヒムが何処からとも無く出てきます。
彼は50歳のベテランガイド。幼い頃からロバやラクダを連れ村々へ荷物運びをしたり、ガイドでは多くの観光客を山岳地帯へと案内し、周辺の地理を熟知し、植物や動物にも詳しいためまるで狩猟をしないマタギのような人でした。
早速、6日間3人分食料の買い出しに出かけます。
ここでも監督が手慣れた感じであれやこれやとイブ爺に指示をして買い込んでいきます。
左:監督ジュメア 右:ガイド イブラヒム
こんなに大量に買っても約1600円という物価の安さ!
食料を監督の車に積み、出発地点でありイブラヒムの自宅もある村へ出発。
イブ爺の娘さんと奥さんにチャイでもてなされ前半三日分の食料のみを
選別します。
残りの食料は息子ムハンマドがロバで宿営場所まで届けてくれると言います。
娘と奥さんにキブツのナツメヤシを少しおすそ分けし、いよいよ出発です。
空気は澄み、空はどこまでも青く、険しく赤い山が延々と続いています。
時折、ロバや山羊を連れている子供たちが物珍しそうにこっちを見てきますが、
挨拶すると恥ずかしがり気味にアライクムアッサラームとちゃんと応えてくれます。
こんなのどかで静かな場所にいるととてもイスラエルとエジプト同士がいがみ合っていたり、ISがシナイ北部でテロ活動をしているという現実がまるで嘘のように思えます。
出発から10分程度で急にイブ爺が「祈りを捧げるからちょっと待ってもらえないか?」
と言いました。
実はイブ爺は経験なイスラム教徒、1日5回のお祈りを毎日欠かしませんでした。
因みに5回とは、朝5時、正午、午後15時、17時、19時。
また事あるごとに、
「アッラーハンブレラ!(神のご加護を)」
と叫んでいました。
【宿へ到着】
山岳地帯の谷間にはヤシの木が生え、ベドウィンの個人の果樹園などが整備されていた
小さな峠を越え、谷間へ下りしばらく歩いていると庵のようなものがポツポツを現れ出しました、そしてイブ爺が
「今日はここに泊まるでなアッラーハイ!!!」
と言いい到着したのは崖に隣接した石と粘土とヤシの木の枝葉で、
できた質素な庵でした。
「ここは友人、アブラハムのものだけど気にせず使ってくれ。
あとここにケシの芽も生えてるでなアッラーハンブレラ!!!」
とのんきな感じのイブラヒム。
こちらも早朝から国境越えや長距離移動と疲れていたのでホッとしました。
頼もしいイブラヒム!!!
早速、この日の薪拾いに出かけます。
イブ爺は鋭く、しかも毒まであるナツメヤシの棘の茂みなど全く気にせず分け入り、素手でメキメキと枯れ枝を折りだします。
棘の毒がどれほど厄介なものなのか、農園で働いている自分はよく知っているので
もうイブ爺への尊敬の意を示さずにはいられません。
何処からともなく現れたベドウィンの子供らに蒔運びを手伝ってもらう👍
ベドウィンはどんな時もまずは一杯のチャイから行動を開始します。
イブ爺も夕飯の準備をぼちぼちと始めます....
狭いが作りや機能はシンプルで居心地の良い庵
静かに夜が更けていく....
谷間から覗いていた陽はあっという間に崖裏へと落ち、星が輝き出し、
焚き火があたりを一層明るくします。
炭の煤で真っ黒になった金属製のお椀に野菜たくさんのスープを啜い、時折歌いだす
イブ爺の歌声に耳を傾けると、なんだか全く別の惑星にでも来たかのような錯覚がします。
庵内でも焚き火を囲み、周囲にシュラフを並べてウトウトウト💤
明日は長い距離を歩くので、早めに就寝...
体力を温存します。
Day 2nd.3rd.へ続く...